北前船の寄港地、野辺地町
旧津軽藩と旧南部藩の藩境にある野辺地町。陸奥湾に面しており、江戸時代には西日本との海上交易を担った北前船の寄港地として栄えた歴史ある港町だ。文化・文政の時代に北前船で京都より伝わったと言われているのがカワラケツメイという薬草。
弘法大師が日本に広めたとも言われるこの薬草は、当時の野辺地の豪商たちが茶がゆにして好んでいたと言われている。
今では野辺地町の特産品となったカワラケツメイ茶を使ってお菓子を開発したのが「パン工房ビリオン」だ。
今回はパン工房ビリオンの岡田秀大さんにお話を伺った。
青森県で一番の老舗パン屋さん
まず触れておかなければならないのがパン工房ビリオンの歴史だ。
実はパン工房ビリオンは青森県で一番古くから続いているパン屋さんなのだ。
「実は私も継ぐまで知らなかったんですけどね。文献にもちゃんと残っているんですよ。」
と岡田さんは笑いながら話してくれた。
店内に飾ってある新聞記事を見せて頂いたが、確かにそこには明治30年創業と書かれていた。約120年もの歴史があるということになる。
創業当初は和菓子店だった「岡田菓子店」は「岡田製パン」「パン工房ビリオン」と名前を変えて現在に至る。岡田さんはビリオンとしては2代目店主、岡田菓子店の時代から数えると4代目になるという。
創業から地元に愛されてきたビリオンのパンは、学校の給食や購買部向けの製造を請け負った。
特に地元の高校の購買部で売られていた「油パン」は大人気で、当時を知る多くのお客様のリクエストで復刻して、今でも大人気商品となっている。
そんな野辺地町にとって欠かせない存在となったビリオンは、野辺地町の特産品を使ったパンやスイーツを開発、販売している。
良薬口に甘し? ビリオンのカワラケツメイスイーツ
今回のインタビューのため、岡田さんは撮影用に少し緑がかったラスクを用意してくれていた。この優しい緑色がカワラケツメイ茶の色だという。
野辺地町の観光協会から、町おこしのためにカワラケツメイ茶を使った商品を作ってほしいと依頼があり、様々なスイーツを考案した。
岡田さんは、ちょっと食べてみますか?とカワラケツメイ茶入りのマドレーヌを用意してくれた。
マドレーヌを割ってみると、断面はラスクと同様に優しい緑色。しっとりと柔らかいマドレーヌを口に含むと、しっかりとした甘みと独特の風味が広がる。
岡田さんによると、人によってはドクダミ茶のような味という方もいるそうだ。
カワラケツメイ茶の独特の風味が甘さを引き立てる美味しいマドレーヌだ。
良薬口に苦し、と言われるが岡田さんの手にかかると良薬も甘くて美味しいお菓子となる。
岡田さんが作る野辺地町の特産品を活かしたメニューはこれだけではない。
陸奥湾といえばホタテ。陸奥湾に面する野辺地町のホタテをたっぷり使った「ホタテカレーパン」も自慢の逸品だ。
養殖される途中ではじかれてしまうベビーホタテをボイルしてバターソテー。カレールーと合わせて包んだカレーパンだ。
ベビーホタテを贅沢に3~4個包んだ贅沢な食べ応えが人気だ。
県内のイベントマスター?青森のことならおまかせ
岡田さんは土日になると、県内各地で行われるイベントにキッチンカーで参加している。
キッチンカーで青森県狭しと駆け巡る岡田さんのネットワークは凄い。
今回のインタビューに同行したスタッフが週末に青森市に遊びに行くということで、岡田さんにイベント情報を伺ったところ、快くたくさんの情報を教えてくれた。
青森市周辺のイベント、観るべきスポット、さらには美味しいラーメン屋さんまで。岡田さんが教えてくれたスポットを巡れば十分に青森市を満喫できそうだ。
余談ではあるが、ライター加藤の生まれ故郷・鯵ヶ沢町の名物に新味が登場したという情報まで頂いた。青森県の西端の情報まで知っている岡田さんの情報網は広い。
イベントでビリオンのキッチンカーを見つけたら、ビリオンでしか食べられないパンと岡田さんの笑顔を満喫して欲しい。
ライターメモ
後日、青森市で岡田さんが参加するイベントに伺ったスタッフが油パンを買ってきてくれた。名前の通り揚げパンではあるが、それほど油っぽくはなく、甘さ控えめのこしあんが包まれていた。
野辺地町と共に歩んだ歴史が詰まったパンの味はシンプルだけど、体にしみわたるような優しい味がした。
インタビュー後に知ったが、岡田さんはInstagramで情報発信を行っており、イベント情報はインスタグラムからチェックできる。パン屋さんとは思えぬ高頻度のラーメン情報更新も非常に嬉しい企画だ。ライター加藤がInstagramをフォローすると、フォローバックだけではなく「フォロー有難う御座います!」という顔文字付きのメッセージまで送ってくれた。
お店公式アカウントからメッセージを頂くのは正直ちょっと嬉しい。