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一切カラをやかない 同じ人間にできることなら私にもできる。

2023 03.15 Wed

一切カラをやかない 同じ人間にできることなら私にもできる。

六ヶ所村

「私は犬や猫ではなく人間。同じ人間にできることならなんだってできる」

「ろっかしょ村おこし 和(なごみ)の工房」の代表、貝塚恵子さんは力強くそう語ってくれた。
貝塚さんはインタビューに伺った2022年現在で78歳。大半の方はお仕事を引退されていてもおかしくない年齢でありながら、これほどまでに力強くチャレンジ精神に満ちた言葉を頂いた。

「あんたたちはまだ若いんだから、がんばりなさいよ」と笑顔で話す貝塚さんの口調は強く、真っ直ぐに心に届く。

実際に経験して、実績を積んできた方の言葉の重みを感じた。
30分の予定のインタビューだったが気づけば2時間以上。インタビューとは名ばかりで、たくさんのことを教えて頂いた。
貝塚さんの知識はおばあちゃんの知恵袋なんてレベルのものではない。
自らの経験をもとに新しい知識もとり入れ、今もどんどん新しいアイディアが湧き出てくるまさに知識の泉だ。

「自信がないものは売らない」地元を知り尽くした商品

和の工房は青森県六ケ所村の泊地区にある。
建物には「デリステーション貝塚」と書かれている。元々コンビニを経営していた貝塚さんはお店を閉めたあと、同地で和の工房を運営している。

泊に生まれ、泊で育ち、六ケ所村の素材を知り尽くす貝塚さんは、地元のものを主役にして商品開発をしている。
「かっちゃのめっぽうどん」がその代表だ。恐らくほとんどの人は、めっぽって何?という疑問を抱くことだろう。

めっぽとは「ちがいそ」という海藻のこと。

泊の沖合に多く繁殖しており、昆布やワカメに混じって水揚げされることが多いが、地元の人でもあまり食べることがない海藻だった。それゆえに地元の言葉で役立たずを意味する「めっぽ」という名前を付けられてしまった。
めっぽは栄養が豊富だから商品にしてみないか、という父の助言もあり貝塚さんはめっぽうどんを開発した。

六ヶ所・泊の名産品はもちろん、地元の人でもなかなか食べないものまで、貝塚さんの手に掛かると美味しい商品となってしまう。

「自信が無い商品は売らない。最低でも80%。商品に改善点が見つかったら直して100%に近づけていきます。」

貝塚さんは自信を持って商品を送り出し、時にはお客様の声に耳を傾けて完璧な商品を目指している。

いい商品の価値をさらに高める貝塚さんのプロデュース力

貝塚さんの仕事は商品を開発して終わりではない。
「ふりふり昆布300」「でるでるダシが出る 3年ねかせた昆布」「2/365ウニ」。
どれも特徴的な名前の商品だが、これらの名前は全て貝塚さんがつけている。

「でるでるダシが出る 三年ねかせた昆布」という商品名は心地よいリズムに乗せて商品の特徴が全て伝わってくるような名前だ。
当然貝塚さんが作った商品なので自慢の商品ではあるが、商品名だけで商品の価値を伝えることができる。楽しい名前に興味を惹かれてついつい買ってみたくなる商品となる。

「ふりふり昆布300」や「2/365ウニ」の気になる数字は、貝塚さんが商品に添えている説明を読むと全ての謎が解明される。
例えばふりふり昆布300は、一本の瓶から300杯のお味噌汁を作ることができるから、「2/365ウニ」は泊地区で年間2~3日しか獲れない希少なウニを使用していることからつけられた名前だ。

その他にも、六ヶ所村の歴史が書かれている紙が添えてあり、六ヶ所村のストーリーをつまみにお酒を楽しむことが出来るお酒など、貝塚さんが提供する商品には個性的な名前やキャッチフレーズ、ストーリーなどが添えらえており、商品の特徴を表現したり、読む楽しみを加えたりしている。

これらのパッケージの題字は貝塚さんが自ら筆で書いている。学生時代から60年以上使っているという愛用の筆を工房に常備しており、何か思いついたらすぐに書けるように準備している。
大ベテランが筆で書く商品名は型にはまった綺麗な文字ではなく、まるで商品の個性を表現しているかのような味のある文字だ。

パッケージのイラストもかわいらしい独特のイラストが描かれているが、貝塚さんが考案して、息子さんのお嫁さんが描いているそうだ。ポスターに登場する貝塚さんご本人のイラストもかわいらしく、優しい笑顔がそっくりだ。

和の工房の商品は、商品名、説明、キャッチフレーズ、題字、イラストなどほぼ全てが貝塚さんのプロデュースによるものだ。

和の工房では食卓の会話に花が咲くような美味しい商品を提供している。
貝塚さんが作る商品の品質が素晴らしいのはもちろん、考え抜かれたデザインと文章によって、商品を手に取った人を五感で楽しませるのだ。

自分の手で道を切り開く行動力

「私は凄く負けず嫌いだよ」

と貝塚さんは言う。冒頭でも触れた「同じ人間にできることならなんだってできる」という貝塚さんの信条にその気持ちが強く現れている。

若いころからチャレンジ精神旺盛だった貝塚さんは、中学校を卒業後八戸の高校に進学した。当時は同じ中学校から1人か2人しか高校に行けない時代、バスも通っていない環境のなか、船に乗って八戸に向って自炊生活をスタートしたという。
当時は女性が取得することが少なかった自動車の運転免許も貝塚さんは取得した。
自分のやりたいことをどんどん自分の手で叶えていった貝塚さんだったが、高校卒業のタイミングで壁にぶつかった。
当時は生活は豊かとはいえず、どうしても行きたかった大学に行くことができなかったのだ。

「悔しくて1ヶ月くらい布団の中で泣いたよ。」

笑顔で話す貝塚さんだが、当時の無念は想像に難くない。
それでも貝塚さんが歩みを止めることはなかった。結婚後に嫁ぎ先でコンビニエンスストアを始めた。

仕入れた商品だけではなく、オリジナルのお惣菜やお弁当を並べ、最盛期はかなりの売上があったそうだ。
貝塚さんはコンビニ経営でしっかりとお金を稼いで4人の子どもたちを自分が行きたくても行けなかった大学に通わせることが出来た。しかもそのうち一人は貝塚さんが叶えられなかった夢を叶えた。今ではさらに多くのお孫さんたちも元気に羽ばたいているそうだ。

ずっと走り続けてきた貝塚さんは子どもたちが独り立ちしたタイミングで、長年続けたコンビニエンスストアを閉めることにした。

「ナショナルブランドの商品を右から左へ流すだけの仕事が性に合わなくて」

コンビニの店舗はろっかしょ村おこし和の工房として生まれ変わり、貝塚さんの夢はまた新たな形で走り始めた。
父の助言で生まれた「めっぽうどん」を皮切りに、地元六ケ所村の素晴らしい素材を使った商品を数多く開発。
マーケティングの講演会など、ためになるものがあれば積極的に通った。
前述の「でるでるダシが出る 3年寝かせた昆布」は、とある落語家さんがくれた「七五調で商品名をつけたらいいですよ」というアドバイスからリズムを意識して付けられた名前だ。
ついつい口に出して言ってみたくなるような楽しいリズム感で商品の特徴がわかる。

和の工房の商品がカタログに掲載されると、売り上げをしっかりと分析する。次のシーズンに掲載される場合は、写真を差し替えたり掲載順を変更したりと売れるための工夫を考える。
過去に袋入りの貝焼き味噌を出品して売り上げが奮わなかった時は、次年度からほたての貝殻を入れることで売り上げが大幅に改善されたという。

つい最近では補助金を利用して、商品を瞬間凍結する機械を購入した。
学べるものがあれば学び、足りないものがあったら工夫する。今も貝塚さんの商品開発には一切の妥協はない。

成功の秘訣は「カラをやかないこと」

「カラやけばダメだよ」

貝塚さんのお話の中で何度も出てきた言葉だ。

「カラをやく」とは、青森県南部地方周辺の方言で、手を抜く・怠けるという意味だ。ライター加藤の活動の拠点である八戸市でもよく使われる言葉ではあるが、貝塚さんに言われると特別な言葉に感じてしまう。

商品開発だけではない。78歳にしてスマホを使いこなし、我々の目の前で六ヶ所村の物産館「六旬館」での売り上げをチェックしていた。さらに税務処理は自分でパソコンを使って行うそうだ。
年齢なんて関係なく、常に知識を取り入れ自分の武器にしてしまう。お世辞でもなんでもなく、貝塚さんのように常にチャレンジして生きたいと思った。

貝塚さんの手を抜かない姿勢、学び続ける姿勢が冒頭の「同じ人間にできることならなんだってできる」という信条に繋がり、実際になんでも可能にしてきた。

本当は30分の予定だったインタビューが2時間以上に延びてしまった。貝塚さんのお話は余すことなくどれも面白くて、すべてが勉強になった。
また来ます!と挨拶をした私たちに

「あんまり来ないで、忙しいから」

と笑顔で返す貝塚さん。忙しいのは重々承知だが、またお話を聴かせて頂きたいと思う。
八戸から車でたったの2時間。カラをやかないで、また泊まで来ます。

ライターメモ

個人的に一番好きな商品名は「ちゃっこいほたて茹でだの」。
商品名だけでこの商品のほぼ全ての情報を得ることが出来て、方言を交えることで少し可愛くて親近感が湧いてくる絶妙な商品名だと思う。ただの「冷凍ベビーホタテ」として並べても買わないだろうが、「ちゃっこいほたて茹でだの」は買いたくなる。
貝塚さんの考える商品名やキャッチコピーは難しい言葉は使わないが、どれもぐっと興味を惹かれる素晴らしいものばかり。ライターとして本当に勉強になった。

「いくらお金かけてホームページ作っても商品が売れなきゃ意味ないんだよ。」
非常にプレッシャーを感じるお言葉ですが、売れるホームページと記事が出来上がるように頑張ります。

EDITOR

この記事の作者

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加藤友樹

株式会社ジーアイテック
https://www.gitec.co.jp/
鯵ヶ沢町出身、八戸在住のライター。津軽も南部も知り尽くす、青森県愛好家。
青森県出身にも関わらず、青森県を堪能したいと常に熱い情熱を注ぐ。

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